刃物の製作では、手動式の強風手廻吹子の中にコークスと呼ばれる固形燃料を入れて加熱します。コークスは、石炭などの炭素質物質を高温で加熱処理して得られるもので、主に鉄鋼生産などの工業プロセスで使用されます。コークスは高い燃焼性能を持ち、鉄鋼生産などで必要な高温環境を維持するために利用されます。
加熱したコークスの上に高速度鋼バイト材を置き、アンビル(鋳鋼製の台)の上で刃物の形状に叩いて作ります。この作業は手作業で行われます。当時はコークスに火が付くまでが大変で、高速度鋼バイト材が赤熱(600℃~900℃程度の色)になるまで時間がかかります。その後、高速度鋼バイト材をアンビルの上で平らになるようにハンマーでたたきますが、最初はなかなかうまく行かなかったです。
親方に怒られながら、やっとの思いでほぼ平らになったら、焼き入れを行います。焼き入れによって刃物の硬度が高められます。焼き入れ後は、両頭グラインダーの砥石WAを使って粗挽き研磨を行い、仕上げの砥石GCでさらに研磨します。
最終的な仕上げでは、刃物をバイト旋盤に取り付け、油砥石(オイルストーン)を使用してラップ仕上げを行います。この時、親方に最も注意をしなければならないことを言われたのが、「刃物の命である刃先にチッピングや欠けなどが生じないようにする」ことです。切れ味を保つようにしなければならない為、慎重に仕上げ作業を行います。
アンビルとは、金属を打ち付けたり、切削したりするために使用させる金属製の工具の一種です。
アンビルは大きなブロック状の金属の塊をかこうして作られており、一般的には鋳鉄や鋼鉄などの耐久性が高い素材で作られています。アンビルには、平たい上面や、とがった部分、溝状の部分などがあり、それぞれ異なる用途に使われます。
アンビルの歴史は古く、鉄器時代以前から存在していました。現代のアンビルは、鉄器時代以降、鍛冶職人や金属加工の職人によって改良され現代の金属加工技術においても欠かせない道具となっています。
焼き入れとは、一定時間置いたり、ハンマーで形状を作ったりした後、急激に冷却することを焼き入れといいます。
焼き入れ作業は鋼を硬くする目的で行われて、鋼に含まれる炭素量で硬化の変動がします。
次回は完成バイトの当時の研ぎ方(研磨)をご紹介をします。